俳句もどき
義兄は全国的にも有名な俳句サイトを運営していて、「花鶏」という俳句結社に属していて角川書店から「風紋」という句集も出して活発に活動している俳人だ。
筆者は俳句の素養は全く無く、単に5,7,5の文字を並べるだけだが、お遊びで作った「俳句もどき」を公開してみた。
(句の上にカーソルを置くと解説が表示されます。)
106ももうあきの日の苦笑い
夕焼けに人型に開く異界あり
忍者にも見習えとばかりアメンボウ
救う手も失くして梅雨の磨崖仏
鶯も間合い充分声を上げ
春の日々ハンドメイドが山をなし
青空に孤独の旅路飛行雲
冬晴れに裸で挑む古来稀
寒風にホッと休めの赤信号
サングラス掛けて世間を見下ろしぬ
寒の路地猫と日向を争いぬ
流星の溶け込む空の深さかな
青空を切り抜く影や秋の蜘蛛
秋の日に姉の技待つ竹の尺
夕焼けを深く切り裂く陰の峰
フナムシや間合い微妙に同席す
お化け達集めてみてもこの酷暑
時々は浮世窺い夏の亀
ブレーキに冷や汗もある夏の霧
大ミミズ探り当てたか己が道
カナヘビのストップモーション刹那的
灯標も水浴びしたい灼ける昼
ダンプ軍西日に構え荷台盾
歩み停め赤黄の二両夏の駅
緑陰に五百羅漢の笑い声
大木も押し花にする春の影
赤とんぼ社務所の巫女を誘い出し
秋空に周り見て引く恋みくじ
花の屑浮かぶ隙間に慣れし顔
花吹雪そっと踏み出す一歩かな
赤信号刹那を憩う秋の道
もう待てぬとばかり飛び立つ蜻蛉かな
軒を出て入道雲にのけぞりぬ
照り返しあごに受け止め道急ぐ
カナヘビのすらりと伸びて夏を浴び
弓引けば耳を突き刺す矢音かな(川柳)
彫刻の弓の奏でぬ春の歌
雲雀にはまだ空の高さ欲し
風切りて7段ギアの古希の冬
寒鯉の影を重ねて水清し
カナヘビも小春日和の塀の上
水涸れにゴミ纏い立つ水位塔
空遥か機影を映す夕日かな
青空にパラグライダーのぶら下がり
葉の先に空を集める露の玉
絡み合う仙人草の髭の謎
行列に秋の楽屋の安堵かな
足らずとも満たされて見る十三夜
豊作を祝いて集う雀かな
水面の間合いの巧み蜻蛉浮く
気がつけばつくつくの声止みており
相席に蠅の賑わい招き猫
クマゼミの鳴いて熱気に油注ぎ
葉を結ぶ糸に謀りの蜘蛛潜み
紫陽花に行く手阻まれ回り道
まくなぎの誘い振り切り帰路急ぐ
母の日はカメラ片手にお茶に菓子
新緑の陰より出でて影を踏み
川鵜の眼レンズも確と捉えおり
夫婦岩ただ見つめ合う春の宵
近けれど手も繋がれず夫婦岩(川柳)
実にあらず花ぞたわわに八重桜
約束を忘れな草に訊いてみる
アメンボも取り付く島の花の屑
木も草も空にも春の陽の満てリ
タンカーに春の知らせの岬かな
寄り添うて霞に老いる夫婦岩
たんぽぽの種それぞれに旅立ちぬ
三寒が四温寄り切る今朝の空
梅の香や鼻膨らませ仰ぎ見る
裸木を歩道に映す陽の恵み
立ち上がる街の影絵の寒暮かな
厳寒や地獄の熱の有りがたき
三日坊主諌むる凧の眼あり
振り袖の鯉も浮世に御慶かな
枯れ芝を踏みて野猫に咎めらる
客席の妻と第九を分かち合い
客席の母に第九をとどけたり
エレベータドアの向こうはクリスマス
落ち葉にも間合いの美学ありにけり
名曲を終えて晴れやか舞台立つ
稲妻に行く手照らされ立ち尽くす
七色に蜥蜴の縞の流れ去り
蟋蟀も非日常の宿の夜
化石葉の秘めし伝言読む秋日
石碑にも風の供えの青き柿
盆の月闇を刻めるクレーター
盂蘭盆会猫も杓子も手を合わせ
虚ろなり首相の言葉澄みし空
B29を忘れて蜻蛉の空虚し
難聴が心配になりセミの森
天牛の衣に隠す剣あり
セミ去りてようやく得たりこのしじま
烏瓜思いは花の乱れ髪