大分県立芸術文化短期大学公開講座
「指揮・理論・作曲を学ぼう」
指揮コース
講師:大分県立芸術文化短期大学准教授
森口真司 先生
6月19日(日)大分第九を歌う会の練習に行くと、第九関連の受付の他に受付がある。見ると表記の公開講座の受付である。指揮には興味があり、一度、習って見たかったので、今からでも申し込めるか聞いたとろこOKという事で受講することにした。
- 火曜コース:6月21日(火)、28日(火)、7月5日(火)
- 木曜コース:6月23日(木)、30日(木)、7月7日(木)
- 時刻:18:00〜19:30
- 受講料各回800円
6月21日(火)
少し早く行くと、女性の受講生が受付が開くのを待っていた。話を聞くと、音楽教育に関わっておられるとのこと。筆者の元職場とも関係がある方だった。「指揮の経験はあるけれど正式に習ったことがないのでこの際ちゃんと基礎を身に着けたい」とのこと。
この日の出席者は先のAさんを含む女性3名と男性2名。女性3名はすべて音楽教育に携わっておられたり、吹奏楽部の顧問をされていたり、指揮の経験がある方だった。筆者を除く男性はアジア系の若い学生のような方。
講義に先立って、森口先生に受講理由を聞かれた。他の方は現に指揮をしていてその技術向上のためとのこと。筆者のみ「基本的に興味から」と答えたが、私のような全くの素人が混ざっていると、先生は「やりにくい」と感じられたかもしれない。
内容
- 「叩き」の基本動作
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- 左手でへそより少し上の正面位置にお皿を作って、右手を軽く握りそのお皿の上に置く。その際、右手の腕は脱力する。
- 右腕に一瞬上向きの初速を与えて、腕を放り上げる感覚で上に持ち上げ、投げたホールが最高点に達して元の左手に落ちて来るのと同様の動作で左手まで落とす。このとき最高点が目の高さくらいになるように初速を与える。
- 以上を繰り返すと1拍子の叩きになる。これはちょうど反発係数1.0のボールが左手のひらで跳ね返る運動を繰り返すのに似ている。
上記の基本動作では、「ボールを投げ上げてそれが自由落下するような運動をする」という点がキーポイントらしい。森口先生の説明を筆者流に解釈すると「人間は、無意識の内に投げ上げられたボールが元の位置に落ちて来る運動をイメージしているので、ボールが元の位置に来る時刻を正確に予測してそれにより、正しいタイミングを取る。」ということらしい。筆者のような工学系の人間には解りやすい説明だ。
- 2拍子
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1拍子を一つ置きに小さくする。そのままでは強拍と弱拍の区別がつきにくいので、
- 1拍目は左上目の高さまで上げて、へその少し上の正面まで振り落とす。
- 2拍目は右上肩程度の高さまで上げて、1拍目と同様に振り落とす。
キーポイントは描くV字が鋭角になること。
- 3拍子
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筆者は子供のとき「3拍子は三角に振る。」というように教わった記憶があるが、そうではないようだ。基本は叩き動作であり、3拍とも棒の最下位置でとる。1拍目が左、2拍目が中央、3拍目は右になる。これはなれないので難しい。落ちる位置をイメージすると振りやすい。
- 4拍子
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3拍子の1拍目が真下(中央)に落ち3拍目も中央に落ちる。これも、子供のときに習ったのとは異なるが、3拍子よりも振りやすい感じである。
- 宿題
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叩きの基本動作で、頭上からへそより下までを振る動作を繰り返す。1拍子の練習。これは、先生のJ.S.Bachの平均律クラビア曲集1巻の1番のプレリュードの演奏に合わせてしばらく練習した。
6月28日(火)
今回は女性一人が前回と入れ替わって、私の元同僚Yさんの奥さんが来ていた。前回、知り会ったAさんとも親しい友達だった。世間は狭い。
内容
- 「叩き」の形の復習
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1拍子、2拍子、3拍子、4拍子
シューベルトの即興曲作品142−3の主題などの演奏に合わせて振る練習。振り始めるには、事前に拍を数えて最後の拍で振り上げる。
- 「しゃくい」の練習
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「叩き」のようにリズムを際立たせる必要がない場合に使用するが、実用的にはこちらの方が多い。「叩き」は行進曲などの時には必要である。
「しゃくい」振り方
- 運動速度は「叩き」と同様。
- 拍を決める点は、下に凸の放物線の最小値の位置。
- 2拍子の場合は、放物線の右は短いが運動時間は左と同じ。
- 3拍子の場合は、「叩き」の場合と少し異なる形。タジン鍋を横方向から見たような形になる。
- 4拍子は「叩き」の4拍子とほとんど同じ。線が曲線にになる。
- 平均運動
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平均運動は曲線上の運動が等速になる。実用上はゆっくりした曲で、曲の流れが決まってきたとき使う。
「平均運動」の振り方
- 振り始めは「しゃくい」を使う。
- 曲の流れができたら「平均運動」にする。
- 練習
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先生のピアノ演奏による幾つかの曲に合わせて振る。
- 振り始めを数える。
- 強弱を考えてふり幅を決める。
- 途中、音の強弱が変化する場合は、1拍前からふり幅を変える。
- 宿題
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上記シューベルトの作品142−3とウェーバーの「こちらへおいで、美しいドリーナ」の主題と第1変奏の楽譜に基づいて振る練習。次回は多分、弱拍から始まる曲やテンポルバートなどについて話があるのではなかろうか。
7月5日(火)
開講時間が迫っても筆者一人だったので、受付のお嬢さんと話をした。本学の声楽の卒業生とのこと。筆者が出た「カルメン」や「オペラ・ガラコンサート」「こうもり」「天国と地獄」「第九」などのことについて話した。その内、Aさんが来て、次に日出からの女性(この方も先生らしい)、そして講義が始まってから男子学生が来た。
内容
- 先週の復習
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シューベルトの作品142−3の復習。最後のsmorzandoの振り方ととめ方。止め方は、拍のセンターで棒を止めて、止める拍で反時計回りに下をえぐるように1回転する。
- フェルマータの振り方や止め方
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「こちらへおいで、美しいドリーナ」は、フェルマータの振り方、sforzandoの前の振り方、その後のritard.e dimin.の振り方、
ritardの振り方
- 動かす速度は1定で、振り幅をすこしづつ大きくする。
- 大きくする限界に来たら、拍を分割して振る。
その後のフェルマータの振り方3種
- のばして続けて振る。
拍の途中位置で必要な時間止めて、1拍目の位置に持ってゆく。
- のばして止めて休んで改めて振る。
拍の途中位置で必要な時間止めて、反時計回りに下をえぐるように回して(音を一旦止めて)、拍の始めの位置に持ってゆく。
- のばして止めて休みも延ばして改めて振る。
拍の途中位置で必要な時間止めて、反時計回りに下をえぐるように回して(音を一旦止めて)、拍の始めの位置に持ってゆく。
- 全体通しての練習
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全体の流れを考える。筆者のような年寄りは、楽譜を見てすぐにそれを体の動きに反映するのは難しい。曲を覚えて全体の流れを予測しながら指揮をすると大体巧くできそうである。
- 質疑応答
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- Q:マーチなどの最後の止めはどうするか?
A:4分音符スタッカートなどの場合、気合で止める。
テヌートの場合は、どこまで延ばすかを明示するために上のやり方。
スタッカートとテヌートの中間のような場合は難しい。
- Q:マーチのトリオ部分を4拍子で振ることはどうか?
A:通常はそのようなことは無い。
- Q:全然振ったことが無い人の場合、前振りは何拍して良いか?
A:2拍までが普通。4拍というのはいくらなんでも長すぎ。
できれば、1拍。
ただし、死んだ拍を振る。生きた拍だと間違って受け取られる。
「死んだ拍」とは横に小さく動かす。
音を出す直前の拍から生きた拍。
- Q:この大学の図書館の楽譜を閲覧できるか?
A:しかるべき手続きをすれば閲覧できるはず。
- Q:もっと回数を増やすことはできないか?
A:これについては希望も多いようなので検討している。
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